僕はカーテンを開けない。
そのせいで、家で過ごす時は外の様子がまるで分からない。
いつもは落ち着くはずのカーテンの内側。
それがとてもこわくなったのがこの前の休日だ。
カーテンの内側で静かに本を読んでいると、急に気が付いた。
実は外ではとんでもないことが起きていて、
僕が世界中の注目の的になっているのではないかと
玄関の前には僕の部屋に押し入るタイミングを図っている警察官が何人も待機してして、
その周りを近所の人たちが、ただの好奇心で囲っている。
そんな気がしてしまうといてもたってもいられなくなって、とりあえず玄関を開けてみるしかない。
風が吹き込む音と、この焦燥感に似合わない鳥の可愛らしいさえずりが聞こえた。
そこに誰もいないことを確認して玄関を閉めたが、何故だろう不安は消えなかった。
部屋に戻り薄手のパーカーを羽織って
もう一度慎重に玄関のドアを開けた。
さっきの鳥は、もう何処かへ飛んだみたいだ。
ゆっくりと外を歩いて、何も起こっていないか、いつもと違うところがないか確認して回る。
特に何もなさそうだけれど、
いつもより静か過ぎるその空気は、皆が息をひそめて隠れているせいなんじゃないかと思えてきた。
けれどもそれはさすがにただの妄想だと、僕は自分を説得してなんとか家まで戻る。
玄関を閉めて外の世界が分からなくなると、またじんわりと込み上げてきた不安。
たった今確認したじゃないかと、自分で笑い飛ばすようにしてコーヒーを入れた。
カーテンは閉めたままで。
僕よ、カーテン、開けたらいいんじゃない。