入日くん

本を年間約200冊読む内向的人間のちょっとした発信。夜になる前の入日の時間をお楽しみください。

宮下奈都「羊と鋼の森」感想

私の内面をぶつけながら読み切った一冊

音とひたむきに向き合う青年から、目が離せませんでした。

この小説で描かれている、主人公の成長の中に、

私が、ずっと求めてきた人生があったからです。

 

それがあれば、どんな世界でも道を探すことができる、

「たった一つの何か」を持っている人生です。

主人公の彼にとっての調律が、その「たった一つの何か」でした。

羊と鋼の森/宮下奈都

出版社:文藝春秋

ISBN:978-4167910105

発売日:2018/2/9

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この小説では、音の美しい描写と、

音と向き合い成長する、主人公の姿が印象に残ります。

 

ピアノの調律という繊細な音の変化が、文章でとても綺麗に表現されていて、

小説を読んでいるのに、私は音の世界に引き込まれました。

 

しかしこの小説を、私にとって特別な一冊にしたのは

文章で描かれる音の美しさや、主人公の成長とは少し違いました。

 

私がずっと追い求めてきて、手に入れることができなかった

ただ一つのものをひたむきに追い続ける人生に対する、羨望です。

 

彼は調律師として技術を磨く中で、お客さんから拒絶される経験をし、

自分に何が足りないのか分からないのが、怖いと感じます。

そして自分がどれほど足りていないのか、その大きさを自覚します。

 

それでも彼は、その世界で進むことができるのです。

調律に出会った時、欲しかったものはこれだ、と、

一瞬にして分かったという感覚があるからでしょう。

 

私は、羨ましくて仕方がありませんでした。

私もそれが欲しかったのだと思いながら、読み進めました。

今まで、ずっと追い求めてきたものを

この小説に、ぶつけているような気持ちになりました。

 

不思議なことに、それは妬む気持ちではありません。

彼が真っ直ぐに努力すれば、私もこんな風に打ち込みたい、と思い、

彼が迷って苦しんでいる時は、私も読みながら苦しみました。

 

私は、歩めなかった人生を

小説の中で体験したのです。

 

そして、読み終わった今、少しワクワクしながら、

何かを探そうとしている自分に、気が付きました。 

 

これからの人生で迷った時、心が苦しくなった時、

もう一度、この小説を開くと思います。

 

 

 

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