入日くん

本を年間約200冊読む内向的人間のちょっとした発信。夜になる前の入日の時間をお楽しみください。

感動するならこの本!あの頃を思い出す、少年少女の物語

いつから大人になったのだろうか


自分では気付かないうちに年齢だけ大人になり
中身は子供のままだ、と思ってしまうことがあります。

しかし反面、子供の頃には自然と感じることができたことを
感じられなくなっていると思い、少し悲しくもなります。

いつの時代も少年少女は存在しています。
大人になってから思い出す少年少女の時代。
あの頃の感覚を、大人になってから持つのはとても難しいです。
その時代は、認める為、認めてもらう為に
自分でも分からないような何かを追い求め
もがき苦しむ時期でもあります。

そんな少年少女にしかない感覚を持つ
彼ら・彼女たちでなければ生まれない
儚い物語が詰まった本を紹介します。

 

「特別」に救いを求める少女Aの物語

辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」

出版社: 集英社

ISBN: 9784087453133

発売日: 2015/5/20

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少年少女が求める特別とは何でしょうか。

閉鎖された空間である学校。

そこでの救いは、他者と差をつける特別感なのだと思います。

 

ーー「殺してほしい」

ーー「分かった」

 


クラスメイトの徳川に殺人を依頼したアン。

二人は一緒に起こす「事件」についての話し合いを誰にも気付かれないように重ねます。

特別を手に入れるための事件、特別な少年Aと少女Aになるための事件です。

 

事件を媒体としてお互いにメッセージを送り合っているような

繊細で特別な二人の会話が繰り広げられます。

 

「俺の事件で、真剣に殺される気ないだろ?」

彼らにとって真剣という言葉は、非常に重要であり

大人が使うよりも遥かに強い感情が込められていると思います。

真剣に「特別」を掴み取ろうと手を伸ばす少女、

真剣に殺される、真剣に殺す、真剣に事件を起こす。

 

少年少女が持っている繊細な精神と世界を感じて

胸が詰まり、なぜかどきどきもしてしまう、

 

あの頃に誰もが感じていたような

リアルな感情が詰まった物語です。

 

弱々しい強さに引き込まれる物語

白河三兎「私を知らないで」

出版社: 集英社

ISBN: 9784087468984

発売日: 2012/10/25

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転校生の「僕」は不思議な少女「キヨコ」に出会う。

 

キヨコはとても強い少女のように見えます。

自分の力だけで世界に立ち向かおうとしているかのような

とても無謀な強さを持っているのです。

 

しかし彼女の生活を知れば知るほど、言葉を聞けば聞くほど

隠されている、今にも崩れ落ちそうな弱さに気が付きます。

 

彼女のSOSに気付けるのは

本当は彼女を守らなければならない立場である

大人ではありませんでした。

 

「普通に生きたい」と、願うことは間違いじゃない。

それを口にすることも、決して間違いではない。

望む権利も、手に入れる権利もあるのだ、と

そう伝えたい大人はたくさんいるはずです。

 

しかし大人がそれを実現できないことを彼女は知っていました。

唯一の嫌いな同級生と一緒に大人を欺き

お互いに絡まり合いながらもがき

共に生きていこうとする。

 

少年少女の強さと弱さ、そして儚さが光る

魅力的な一冊です。

 

少女の叫びが聞こえる物語

天祢涼「希望が死んだ夜に」

出版社: 文藝春秋

ISBN: 9784167913649

発売日: 2019/10/10

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ーーーわかんないよ。あんたたちにはわかんない。

なにがわかんないのかもわかんない。ーーー

 

少女たちのセリフひとつひとつに痛々しい叫びが隠されています。

 

ふたりの少女は、大切なものを守りたかっただけなのに・・・

希望を持ってしまったことがいけなかったのだろうか、と

あまりにも切ない感情に心が耐えられなくなります。

 

「希望が死んだ夜に」というタイトルから展開は予想されます。

ですが一番大切なのは展開ではなく、

希望とは何なのか、それがどのように死んだのか

ということだと思います。

 

少女たちにはそれしかなかった

本当にそれしかなかったのです。

逆を言えば、それさえあれば・・・

大切な希望が失われた時の絶望は計り知れません。

少女たちの苦しみに掴まれて、涙が流れます。

 

読了後は彼女たちを追い込んでしまったことについて

真剣に考えなければならないと思います。

 

純粋さが生み出す残虐な世界

米澤穂信儚い羊たちの祝宴

出版社: 新潮社

ISBN: 9784101287829

発売日: 2011/6/26

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最後にこれまでに紹介した本とは少し色が違いますが

少女の残酷な魅力が溢れる本を紹介したいと思います。

 

この物語の羊たちとは

おそらくまだ幼い少女たちでしょう。

様々な羊たちが登場しますが

どこか犠牲になっているような、可哀想な雰囲気を纏っています。

一見可哀想な羊たちが自らを守る時、残酷な世界に導かれます。

 

羊たちの心の中に通っている一本の芯

それぞれの羊に、身を捧げる神のような存在がいます。

揺るぎない信念を守る、その純粋な心が少女を引き連れていってしまうのです。

 

この本に収録されている5人の羊たちの物語。

それぞれの物語のぞっとするような残酷な結末を

ただの暗黒の物語だと感じないのは

羊たちが儚さを持っているからです。

この物語は、彼女たちが大人になってからでは生まれません。

純粋無垢な羊たちだけが持つが生み出す世界です

 

そしてこのタイトル「祝宴」という言葉が

残酷さに拍車を掛けています。

この少女たち、羊たちにとっては祝宴なのです。

 

それはどれほど悲しく、恐ろしいことでしょうか。

 

この祝宴に、ぜひ皆さんも参加していただきたいです。