入日くん

本を年間約200冊読む内向的人間のちょっとした発信。夜になる前の入日の時間をお楽しみください。

感動するならこの本!感情移入する小説

気持ちは早く切りかえるべきではない

傷つくことがあり落ち込んでいる時、上手くいかなくて心がもやもやする時、

前向きなあなたは、早く気持ちを切りかえて次のステップに進もうと、

焦ってしまってはいませんか??

 

前向きな考え方をできるのはとても素晴らしいことだと思います。

しかし、すぐに気持ちを切りかえてしまっては

それまで持っていた感情は一体どこへ行ってしまうのでしょうか?

心の奥底へ押し込み、眠らせてしまってはいませんか?

 

眠らされた感情はいつか起き出してきます。

せっかく前向きに歩き始めたのに、

眠っていた感情が頭の中に出て来てしまい

また前に進めなくなってしまうかもしれません。

 

忘れたい、しまいこみたい感情なら

一度全てを心の中から外へ出し切ってしまってはどうでしょうか。

 

その方法として提案するのが感情移入です。

映画や音楽などを鑑賞する時、

感情移入をして気持ちを解放させることをカタルシス(浄化)といいます。

もともとはギリシャの哲学者アリストテレスが論じたものです。

アリストテレスは悲劇を定義する際にカタルシスの効果を説きました。

 

例えば、失恋して悲しく苦しい時間を過ごしているとしましょう。

その時に失恋をテーマにした音楽を聴き、音楽に委ねるように

思い切り悲しみを爆発させます。

すると心が解放され、浄化されると考えられているのです。

 

「失恋した時に聴きたい曲」や「泣ける映画」と検索すると

ランキングなどがたくさん出てくるのは、

カタルシス効果が求められているからだと考えられます。

 

心に溜まっているものを吐き出して浄化することは必要とされているのです。

 

感情移入の対象は音楽でも映画でも美術でも構いません。

 

私が紹介できるのは小説ですので

感情を揺らし、大きく動かしてくれる小説をご紹介します。

 

 

新しい感動を知る本

 遠田潤子「雪の鉄樹」

出版社: 光文社

ISBN: 9784334772734

発売日: 2016/4/12

楽天 kindle

 

心の奥、ずっと奥の方の、

今まで知らなかったようなところが反応し、苦しくなります。

 

人生の中で、流したことのない涙を流しました。

 

初めは、重たい話だなぁと思いながら読み進めていきました。

 

読み進めるうちに少しずつ苦しくなっていきます。

その苦しみの中に突き落とされながらも、

 

何かにすがるように読み進めてしまいます。

これからこの本と出会い、この本を読み始める人の

 

新鮮な感動の邪魔だけは絶対にしてはいけないと思いましたので多くは語りません。

気になった方はぜひこの物語に触れてみていただきたいです。 

 

ひとりの人間の精神に深く入り込む本

中村文則「土の中の子供」

出版社: 新潮社

ISBN: 9784101289526

発売日: 2007/12/21

amazon 楽天

 

人間の複雑な精神を、

一冊の薄い文庫の中でここまで表現できるのか

と驚愕しました。

 

幼い頃の認知・思考回路の形成により

人格に深い闇を潜めている「私」の精神の物語です。

 

ものすごい勢いで「私」の心の中に引き摺り込まれます

仕事前とかにはあまりおすすめしません、支障が出そうです。

 

白湯子という女性が登場します。

「私」と白湯子のふたりはお互いに足りないもの、欠けているものを

そのままにできる関係だと思います。

ふたりは、補い合うような関係ではありませんが

どちらにとってもお互いが必要なのでしょう。

 

一番伝えたいのは最後の衝撃です

最後のセリフに胸を深く深くえぐられます。

読む際は最後の一行までよく味わっていただきたいです。

 

そのセリフの為の小説だとすら感じました。

 

自分の人生が巻き込まれる本

西加奈子「白いしるし」

出版社: 新潮社

ISBN: 9784101349572

発売日: 2013/6/26

amazon 楽天

 

恋愛小説が苦手な私ですが、

恋愛小説というカテゴリーにも本当に様々なものがあるなぁと、

唸ってしまいました。

 

恋、愛、そういうキーワードを持った物語ではありますが

それ以上に人間と人間のぶつかり合いのような

多様で幅広い感情が詰まっています。

 

心がそのまま相手に持っていかれるような感覚が描かれていて

自分の気持ちもそれに巻き込まれていきます。

 

運命の出会いなどのロマンティックな表現では伝わりません。

もっと人間らしい、生々しい感情です。

 

出会ったことで

自分という人間ごと、人生ごと、動かされてしまうような出会いです。

 

それはこの物語の登場人物達の出会いのことでもありますし、

私たちとこの一冊の本との出会いのことでもあります。

 

読み進めていくと苦しくなる、でも止められないのです。

一緒に苦しくなって、心に変化が生まれていく。

そんな体験をさせてくれる一冊です。